4月28日(土)晴れ
      ベトベトさん?イメージ 1
「御宿町の街灯にはラクダに乗った王子様とお姫様がついているんだね」
「そう、童謡『月の沙漠』の発祥の地だから」
「今は街灯がたくさんついて、夜も怖くないよね」
「どう、昔まだ街灯が少なかった時、怖くなかった?」
「ああ、怖かった」
「お堂やお墓なんかあったら、背筋が凍ったよ」
「走り出したいが、走り出したら後ろからオバケが追っかけて来るような気がして」
「ああ、わかる。わかる。走り出すと追いかけられそうになったこと」
 
「急いで歩くと、後ろから足音が聞こえてこなかった?」
「やっぱり。ペタ、ペタ、ペタ・・・という音が聞こえたよな」
「だれか後ろからついてくる。でもふりかえるとオバケに襲われそうで。ふり返らずに、ただ黙々と歩いたこと、あったよな」
「あれって、一体何だったんだろう?」
「あの、後ろからついてくるオバケが最近いないよな」
「やっぱり、街灯がついて明るくなるとオバケもすみにくいのかな」
「あのオバケの名前知っている?」
「知らない」
「あのオバケ、『ベトベトさん」と、言うんだって」
 「『ベトベトさん』?少しも怖くない名前だけどね。オバケの名前なの」
「そう、ベトベトさん、と言うんだって・・・」
 
『月の沙漠』の街灯から、少年の日に帰ってオバケの話に夢中になっていた。
楽しかった。61歳の春です。