4月21日(日)雨
      雨の日はコーヒーと読書
朝から雨降り。イメージ 1
おまけに寒い一日でした。
こんな日は「雨読」です。
目的もなく暇つぶしの読書は、最近、電子書籍を使っています。
それも、昔読んだ本をもう一度読んでいます。
長編は疲れるので短編が多い。
今日は芥川龍之介の「海のほとり」を読みました。
「杜子春」と並んで大好きな龍之介作品です。
書き出しを抜粋します。
 
 ……雨はまだ降りつづけていた。僕等は午飯ひるめしをすませた後のち、敷島しきしまを何本も灰にしながら、東京の友だちの噂うわさなどした。
  僕等のいるのは何もない庭へ葭簾よしずの日除ひよけを差しかけた六畳二間ふたまの離れだった。庭には何もないと言っても、この海辺うみべに多い弘法麦こうぼうむぎだけは疎まばらに砂の上に穂ほを垂れていた。その穂は僕等の来た時にはまだすっかり出揃でそろわなかった。出ているのもたいていはまっ青さおだった。が、今はいつのまにかどの穂も同じように狐色きつねいろに変り、穂先ごとに滴しずくをやどしていた。
 「さあ、仕事でもするかな。」
  Mは長ながと寝ころんだまま、糊のりの強い宿の湯帷子の袖に近眼鏡の玉を拭っていた。仕事と言うのは僕等の雑誌へ毎月何か書かなければならぬ、その創作のことを指さすのだった。
 
書き出しが「・・・・」で始まるユニークな作品です。
この作品の舞台は、近くの上総一ノ宮の海岸。
宿とは現在の「ホテル一宮館」、Mは久米正雄だそうです。
一宮館は何度も訪れ、龍之介の話を聴かせてもらいました。
そんなこともあって、この作品が好きなのかも知れません。
 
マグカップにコーヒーをいっぱい入れて、電子書籍のスイッチを入れます。
コーヒーの香を嗅ぎながらの読書は至福の時です。
一日中雨も、時には良いものです。
庭の農作物も喜んでいます。
夕方5時ころ雨が止んで、北西の空が明るくなってきました。