『終わった人』内舘牧子を読みました
12月11日(金)暴風雨のち曇り
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昨夜からの強い風雨が、今朝も続いています。
昼過ぎに雨は止みましたが、風が一日中吹いていました。
一日中、家の中。
Mさんから、「良い本だぞ読んでみな」と勧められていた本。
『終わった人』内舘牧子を読みました。
主人公田代壮介は63歳。
定年退職を迎え、生きがいと居場所を求めさまよう退職者(終わった人)のお話です。
同じ退職者。
自分とダブらせて読みました。
・・・なんとも、おかしくて、悲しい物語でした。

2ヶ月が過ぎ、とうとう歩数計を買った。もはや散歩でもしない限り、時間をつぶせない。
現役時代にスケジュールで余白がなかった手帳は、真っ白だ。(略)
「以前の俺は一日に一万歩以上歩いていたよな(略)」
「会社止めると、ホント年取るよ。たぶん5千歩も歩いていないよな、俺」(P30)

「・・・声かけてくれればよかたのに」
「ちょっとかけられなかった」
「何で・・・」
「スーツ姿だったけど、スーツが息をしていなかったから」
「息を・・・?」
「仕事を離れて、スーツにふさわしい息をしていない男は、スーツは似合わなくなるのよ」(P159)

定年が60歳から65歳であるのも、実に絶妙のタイミングなのだ。
ていねんという「生前葬」にはベストの年齢だ。
あとわずか15年もやりすごせば、本当の葬儀だ。
(略)
「先が短いから、好きなように生きよ」ということなんだ。
嫌いな人とはメシを食わず、気が向かない場所には行かず、好かれようとも思わず、何を言われようと、どんなことに見舞われようと「どこ吹く風」だ。
これは先が短い人間の特権であり、実に幸せなことではないか。(P287)

言葉の一つ一つがビンビン響きました。
小説家ってスゴイ。