あれ松虫が 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ
きりきりきりきり こおろぎや
がちゃがちゃ がちゃがちゃ くつわ虫
あとから馬おい おいついて
ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ
鳴く虫 ―高橋源吉―
草かげの
鳴く虫たちの宝石工場
どの虫もみんなあんなに冴えてゐるから
虫たちはきつといつしんになつて
それぞれちがつたいろの宝石を
磨いてゐるのだらう
宝石のひかりがうつり
いひやうもない色まであつて
方々の草かげがほんのりあかるい
昭和21年の詩だそうです。
秋の到来を告げる虫たちの美しい鳴き声は、宝石の光となって作者の心に届いたようです。
虫の音を「宝石」ととらえられる感性を持っているのは、日本人だけだとか?
ゆれてるすすきに 秋がある
さらりとしている 秋がある
とびたつイナゴに 秋がある
さびしいみどりの 秋がある
友と歩く 友と歩く
その足音にも 秋がある
誰かを呼ぶ手に 秋がある
答える返事に 秋がある
流れる小川に 秋がある
浮いてる木(こ)の葉に 秋がある
友と唄う 友と唄う
その唄声にも 秋がある
遠くのけむりに 秋がある
消えてく色にも 秋がある
ただよう匂いに 秋がある
静かにしみこむ 秋がある
友と仰ぐ 友と仰ぐ
その青空にも 秋がある
